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坂本真绫欧洲游记——From Every Where 3-2

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Sinopsis

ご安心ください。旅の始まりは快調です。私はパリを楽しんでいます。昨日まではどうしてもクセで「サンキュー」「ハロー」と英語で挨拶していたけど「メルシー」「ボンジュール」が板についてきたし。こんな短い時間の間にも人って少しずつ、しかし確実に環境に順応(じゅんおう)していくものなんですね。メトロのドアに、歩き食い……私からの最初の手紙がこんなばかばかしい報告であなたは拍子(ひょうし)抜けしたかもしれません。凱旋門とか、ルーブル美術館とか、ヴェルサイユ宮殿の話を待っていたかしら。初めてパリに来たというのに私はまだ観光地らしいスポットにはほとんど足を運んでいないんです。かろうじてエッフェル塔の足もとまでは行ってみたものの、エレベーターが何基か故障中らしくてふもとには展望台へ行く人たちの行列がとぐろを巻いっていたので上へはのぼらなかったし。他人から見たら「せっかくパリまで行ってなぜそんなもったいないことを!」って言われちゃうのかも。けれど取るに足りない小さな出来事をひとつひとつ噛み締めながら積み重ねたこの3日間は、私にとってはとても濃厚で、良い時間でした。 最後にもうひとつ。たわいもない。けれど私にとっては驚くべき事件がありました。今日帰り道で突然雨が降り出して、傘も無いし、雨脚(あまあし)はどんどん強くなるし、ひとまずお肉屋さんの軒先(のきさき)に避難してしばらく雨宿り(あまやどり)させてもらうことにしたんです。なかなか降り止まなくて、空を見上げて……気がついたらそのまま30分も経(た)っていました。この私が、たかが雨のために足を止めるというだけでも驚きなのに、30分もじっとしているなんてありえないことです。もっと驚いたのは、その交差点のあっちこっちには私と同じように店先で雨宿りする人たちがたくさんいて、その誰もが動こうとしないこと。あの人たちはいつもああしているのだろうか。ねえ、雨宿りなんて、あなたは最近いつしましたか?いつ終わるかもわからないものが通り過ぎるまで、あらがわず、求めず、ひたすら待っているなんて、なんて豊かなことだろうとひそかに感動しました。雨宿りとはなんて穏やかで、平和な光景でしょう。私が旅に出ると言ったときちょっぴり批判めいた口調で「贅沢だね」と言った人たちに、この最上級の贅沢を見せてあげたかったです。明日の朝の便で2つめの目的地に向かいます。せっかく呼吸が合ってきた気がするのに、パリとお別れ