Jennykaede??????

松浦弥太郎《日々の100》——002

Informações:

Sinopsis

《日々の100》 松浦弥太郎002 ヒノキの漆椀(うるしわん)と匙(さじ)カリフォルニア州東部のシエラ・ネバダ山脈を貫く(つらぬく)ジョン・ミューア・トレイルを歩いた。ジョン・ミューア・トレイルとは、シエラ・ネバダの大自然を歩き、その美しさに魅された人、ジョン・ミューア(1838-1914年)の自然保護思想と、国立公園の父としての偉業〔いぎょう)を記念してつくられた、およそ三百四十キロにおよぶ登山道〔とざんどう)である。標高四千メートル級の山岳地(さんがくち)を縦走(じゅうそう)するアメリカを代表するトレイルのひとつだ。トレッキングの行程(こうてい)は四泊五日(よんぱくいつか)。キャンプで自炊(じすい)するために、テント、シュラフ、着替え、食料といった二十キロ近い生活道具をバックパックに詰めて、一日に最低十五キロを歩いた。山歩きやキャンプは得意ではない。得意ではないから不安が募った(つのった)。何かお守りになるような道具を持って行きたいと思った。軽くて、壊れにくく、手仕事の暖かさがあり、美しさがあり、毎日使うものと悩んだ末、漆塗りの椀と匙を選んだ。漆椀の木地(きじ)は、元来(がんらい)ヒノキで作られるのが上等であるが、ヒノキで作れる職人が少なく、現在はほとんどの漆椀がケヤキを材料にしている。そうと知ると、ヒノキの漆椀と匙が無性にほしくなった。探し回ったところ、漆椀は佐川泰正(さがわやすまさ)さん作、匙は箱瀬淳一(はこせじゅんいち)さん作と、漆塗職人であるふたりを知った。僕はヒノキの漆椀と匙を持って山へと出発した。